こんにちは、相続手続士研究協会の相続手続相談士の新井です!

相続が発生した時、どれだけの資産と負債があるのかも気になりますが、亡くなった故人の銀行口座も気になるところではないでしょうか。銀行は、相続の発生を知らせると亡くなった故人名義の預金口座はすぐに凍結することになります。もし、この故人の口座が水道料金など公共料金などの自動振替に使用されていな場合は、支払いができないことになります。また、支払いだけではなく個人事業主の場合であれば売上の入金なども止まってしまうことになります。これではお金がうまく回らなくなり、一気に資金繰りが悪化してしまう可能性があります。ではどのような手続きをすれば良いのでしょうか。

結論から言えば、「預金口座が凍結されても困らないように準備をしてから銀行へ連絡をする」ということです。これを聞くと「なんだ、当たり前のことじゃないか。」という答えが返ってきそうですが、実はこれが一番重要なのです。では具体的にどのような準備が必要なのでしょうか。その内容は、ズバリ以下に挙げているものが代表的な事前準備をしなければいけない手続きです

  1. 葬儀費用、準確定申告により決定した所得税の納税資金などの納税資金
  2. 水道代や電気代などの公共料金の引き落とし口座の変更
  3. 売上などの収入の受け取りがある場合はその受け取り口座の変更
  4. その他、自動振替の設定をしている振替口座の変更

上記4つが銀行へ相続の発生を連絡する前にしなければいけない代表的な手続きを必要とする口座変更です。稀なケースですが、連絡する前に口座が凍結されてしまうということもありますので、本来であればできるだけ早く口座変更ができるものについては変更することがベストです。また、銀行によっては相続人全員の実印を押した相続用紙を提出することです。また、公共料金はインターネットのそれぞれのサイトから手続きができるケースもありますので一度調べておくことも必要だと言えます。

では、公共料金の支払いをクレジットカード経由で行っている場合はどうなるのでしょうか。この場合は、カード会社が公共料金を一旦立替払いすることになるのですぐに電気やガス、水道の供給が止まってしまうということはありません。

しかし、カード会社から故人への引き落としができなくなってしまうので、故人の契約していた住所宛に督促の通知が来ることになります。このような場合は、速やかに支払いに応じることでその後大きな問題に発展するようなことはありません。

では、ここで故人の預金口座を解約し名義変更する方法についてご紹介しておきましょう。その前に、「①遺産分割協議書を作成しない場合」と「②遺産分割協議書を作成する場合」でその手順が違います。自分がどちらのケースなのかをしっかり把握しておく必要があります。

①の場合
この場合は、対外的にはどのような分割の合意がされたのかわからない状態です。そのため、被相続人と相続人全員の戸籍謄本、「相続人全員の署名と実印による押印」、印鑑証明を揃える必要があります。遺産分割協議書が作成されていない場合は、銀行側からすれば誰がこの銀行口座を相続するか不明な状態で相続人全員による署名捺印が必要となります。

②の場合
この場合は、誰がどの財産を受け継ぐのかが決まっている状態ということができます。これさえ決まっていれば、銀行が依頼してくる書類を準備することで預金の解約や名義の変更手続きに取り掛かることができます。口座ごと相続人が受け取ってしまうことも「相続」という枠の中では可能です。また相続人各々が受け取ることも可能です。遺産分割協議書が完成していれば、それに従い自由に選択ができると言い換えることができます。しかしこの場合は、完成している遺産分割協議書の他に、故人の除籍謄本、戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本並びに印鑑証明書、金融機関が各々で用意している相続届と言われる届出書が必要になります。遺産分割協議書の記載次第では、全員ではなく、受け取る相続人のみが記名押印すれば解約できる場合もあります。さらに印鑑証明書の有効期限、手続き終了後に戸籍謄本等が返却されるのかどうかについては金融機関によって取扱方法が違いますので、事前に確認しておく必要があります。

亡くなった故人の預金口座を公共料金等の引き落とし口座として使用し、凍結されてしまったからと言って慌てる必要はありません。しかし事前に準備ができるのであればそれに越したことはありません。残念ながら人は必ず亡くなり、必ず誰もが相続というものに直面します。もちろん最終的に相続税を納めるか否かという点に違いはありますが、口座の管理についてはほぼ100%の確率で直面することになると言えます。どのような手順を踏めばいいのかわからない時には専門家を活用することをオススメします。