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日本の税理士の仕事と人工知能の関係。悲観的なムードが多いが?

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書いた人: 一般社団法人中小企業税務経営研究協会
2018.09.09

・アナログだった税理士の世界

税理士業界は、ご存知の通り非常にアナログな世界です。

コンピュータ化が進んでいるのは、一部の若い先生の事務所ばかりで、過半数を超える60才以上の税理士さんが率いる税理士事務所は、まだまだアナログで、丁寧に領収書を整理したり、ファイリングを行ったりと、非常に地味かつ手を動かす作業も多いのです。

これは、税金というものが非常に複雑であり、さらには領収書の保管義務を国が定めていることから、あちこちの会計事務所で発生している作業です。お客様は自分たちで経費の計上や売上の確定、そして節税といったものが難しいからこそ、税理士事務所と顧問契約を結び、仕事を全部お願いしていたのです。

なかには、領収書も経費も自分でまとめるから、節税のアドバイスだけほしい、その分だけ、顧問料をまけてほしい、そんなニーズは確実にあったのですが、それでも面倒で手間がかかるので、専門の経理担当事務員を雇うよりは、ということで、税理士事務所に依頼していたという側面があります。

・突然やってきたクラウドの流れ

そこにやってきたのがクラウド会計の波です。

クラウド会計は税理士業務と、会計にまつわる作業を大きく変えてしまいました。もう記帳代行の仕事はなくなりつつあります。なぜなら、経験豊富な事務員さんと同じぐらいの精度で、仕訳をAIと人工知能が行ってくれるからです。

人工知能を搭載した仕訳AIが、クラウド上で顧客が入力した会計データを仕訳してくれます。もはや仕訳の手間も、入力の手間すらなく、銀行の通帳は、ネットバンクでデータをやりとりすることで、クレジットカードの利用明細もまた、ネットのIDとパスワードをいれることで、自動仕訳が可能になるのです。

これは画期的なことで、「税理士にお願いしたいけど、仕訳という誰にでもできる仕事は自動化したい」というニーズをみごとに組んでいました。クラウドには人工知能が搭載されていますから、たとえ複雑な帳簿や例外的な仕訳であったとしても、インターネット上のどこかのクラウド会計で入力された情報から、適切なものを選んでくれます。

それでも顧問先の仕訳に合わない場合は、自分で仕訳を一度切ることによって、次回からは自動で覚えてくれます。

これだけ便利で、コストの削減になるため、税理士との契約を切ってすべてクラウド会計に切り替える顧問先も増えているのです。

・人工知能は、税務にもやってくる?

そして、いずれやってくるのが、税務への人工知能の波及です。いまは税務といえば税理士さんが経験と知識でアドバイスしているものです。しかし、節税のポイントや決算を黒字にすべきか赤字にすべきかという価値観の問題は、人工知能でも代替できるものなのです。

たとえば、個人事業主の顧問先が、国保と年金の支払いに困っていたとします。基本的に、国保は、支払った年度の控除として計上することができます。よって、今年は赤字なので支払いは来年にしましょう、といった細かいテクニックが可能になるのです。

そこで、人工知能があれば、そうした経験と知識が必要な業務こそ、一瞬で代替してしまいます。しかも、この顧問先にはこうしたアドバイスがよい、などのフレキシブルな対応まで可能になってしまうのです。これは、税理士業務を脅かす存在であり、非常にピンチですよね。

・ITを使いこなす

そこで、税理士先生に何ができるか。ひとつに、ITを使いこなすということが挙げられます。これは若い先生ほど有利になりますよね。ITを使いこなして、顧問先にクラウド会計を指導し、また同時に、e-Taxなども教えていくという方法があります。

「スキルを与えてしまっては、自分の依頼がなくなるのでは?」という疑問がわくかもしれません。しかし、そうやって税務以外の点でもサポートすることにより、「あの先生は親切だ」という評判が広まり、売上につながるのです。

・税務調査に特化する

仕訳から申告納税までが自動化される人工知能時代にあって、唯一、自動化されないのが、税務署による税務調査です。脱税・極度のいきすぎた節税はあとを絶ちません。よって、その税務調査時の立ち会いに力をいれていくのです。

今後、税理士が不要になるといわれており、それはつまり、不正な申告も増えるということを意味します。また、昨今の財政難で、国も税務調査には力を入れたいところでしょう。

そこで、税務調査の立ち会いが得意、とことん否認を参入にするという力技で、顧問先や世間一般の信頼を得るのはどうでしょうか。

税務署とは利害関係が対立してしまいますが、それでも、顧問先を黒字にして納税してもらうばかりが仕事ではありません。ときには、税務調査の立ち会いを行って、社会貢献をする必要もあるのではないでしょうか。

よって、人工知能時代には、こうした人間ならではの心理をついた、泥臭い営業こそが必要になってくるのです。

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この記事を書いた人
一般社団法人中小企業税務経営研究協会
一般社団法人中小企業税務経営研究協会

現役税理士が運営する団体。
税理士への経営情報や税制改正の情報を発信し、協会発足3年で会員数100人となる。

現在は情報発信の他に実態的な支援として、現役税理士が実際に売上を上げ続けているホームページのテンプレート地域限定権利サービスもリリースし、会計事務所の売上アップに直接貢献している。

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